CONNECTEDkind 先生のためのガイドブック
GuidebookforTeachers

Part 1:理解する - CONNECTEDkindの基本

「ステイホーム!」でもつながろう、自然と仲間と希望と!

コロナ禍で生まれた希望への学び

はじめに

バルト三国の1つにラトビアという人口200万人ほどの国があります。面積は日本の6分の1ほどの小さな国です。1989年8月、バルト三国の人々が平和的に独立を求めて手をつなぎ、約600キロメートルにわたる「人間の鎖」をつくり、非暴力の示威行動を示しました。これは「バルトの道」と呼ばれ(YouTubeで'The Baltic Way'の映像で閲覧可)、ほぼ半年後に起きた(東ドイツの)ベルリンの壁崩壊を生む遠因の1つとなったと言われています。インターネットのない時代に示された手と手をつなぐ連帯の精神は、小国の人々が団結して自分たちの国を創るという象徴的な出来事でした。

CONNECTEDkindとは

CONNECTEDkindが生まれたのは2020年3月14日、新型コロナウイルスが世界を席巻した時のことでした。感染拡大と同時に教育現場は混乱し、社会全体に絶望が覆いかぶさるように感じられました。そんな時期に、ラトビア人アーティストであるラウラ・ベレービチャさんが「ステイホーム」、つまり家に居ながらも自然や仲間、そして希望とつながる「遊び」を考案し、広めたのです。コロナ禍において開かれたユネスコの持続可能な開発のための教育(ESD)の実践としてのCONNECTEDkindは注目され、ESDのプレイベントとしても世界中の人々が参加して希望を分かち合いました。ちなみに「バルトの道」の時、小学生であったベレービチャさんは小さいながらも「未来は小国が創る」と確信したそうです。

「droplet(雫)」という名前

CONNECTEDkindでは一人ひとりが作る作品を「droplet(雫=しずく)」と呼んでいます。それぞれの雫がkindness(親切さ、やさしさ)となって広がり、やがて大海(持続可能な社会)となる思いが込められた命名です。小さな一滴一滴が集まって川となり、海となるように、一人ひとりの小さな行動が大きな変化を生み出すことを象徴しています。

このガイドブックが目指すところ
1

日本の教師たちがCONNECTEDkindという〈遊び&学び〉を楽しめるように導きます。

2

不確実性の時代の"Teacher"は学校の先生のみならず、広義の「先生」(自然、家族、友達)であることを実感していただきます。

3

アートを通した環境教育やESDの在り方を具体的に示し、国内外の普及に貢献します。

序文

CONNECTEDkind誕生の背景と理念について、詳しく解説した序文の全文をダウンロードいただけます。

序文をダウンロード (PDF)

CONNECTEDkindの創始者

Laura

ラウラ・ベレービチャ

アーティスト / ラトビア

ラウラ・ベレーヴィチャは、「シャドウ・ストーリーテラー」として知られるナチュラル・インテリジェンス(自然知)分野の「先駆的な提唱者」であり、スピーカー、デザイナー、アーティスト、建築家として活動しています。 これまでに、ストーリーテリングとクリエイティブ・ディレクションを軸に、印刷物、アニメーション、映画、プロダクション・デザイン、アート・インスタレーション、展覧会、建築、中国における大規模都市環境プロジェクトなど、国際的かつ多分野にわたる多彩なプロジェクトに携わってきました。児童書のイラストレーションも多数手がけています。

また、想像力、エモーショナル・インテリジェンス、レジリエンスを育む革新的なフレームワークである「CONNECTEDkind」の創設者でもあります。この取り組みは、ユネスコの持続可能な開発のための教育(ESD)専門家から「教育における革命」と評価され、日本では脳科学研究の対象にもなっています。

アメリカ、ラトビア、日本において、子どもから大人までを対象にアクティブ・イマジネーション(能動的想像力)のワークショップを主導。影が持つ「明らかにする力」「変容させる力」「導く力」に魅了され、CONNECTEDkindness(つながりの優しさ)を通じて、人類を新たなウェルビーイングの時代へ導く可能性を探究しています。 現在は、ロサンゼルスのアカデミー映画博物館にてエキシビション・デザイン・ディレクターを務めています。

パーティクル素材集

以下は、ラウラ・ベレービチャ氏によって作成された素材(パーティクル)集です。
Issue 01からIssue05まであります(2026年3月現在)。ここでは、Issue01を公開します。

お問い合わせ

Issue02~05を希望の方、その他特別なご要望などに関するご連絡は次に英文にてご連絡ください。
Laura Belevica: laura@connectedkind.com

Part 2:活用する - ガイドの読み方・使い方

このガイドブックをどう読み、どう実践につなげるかをご説明します

1
STEP 1

散歩する

  • できるだけ晴れた日を選ぶ(影がはっきり見える日)
  • スマートフォンかカメラを持参
  • 近所の公園や学校の校庭など、自然が感じられる場所へ

※晴天でなかったり、散歩に行けなかったりする場合は、本ウェブサイトの素材集から1枚選んでSTEP 4に進むこともできます。

2
STEP 2

自然物と影を撮影

  • 葉っぱ、枝、小石、花弁など、身近な自然物を探す
  • 自然物と一緒にその「影」を撮影する
  • 何枚撮ってもOK(たくさん撮って後で選ぼう)
  • いろいろな角度から、また影に異なる表情が現れる違う時間帯で撮影してみよう
3
STEP 3

お気に入りを選ぶ

  • 撮影した写真の中から、お気に入りを1枚選ぶ
  • 「何かに見えるかも?」と想像力をかき立てられる写真がおすすめ
  • 自然物(葉っぱや小枝や小石)を持ち帰って、自宅で改めて撮影してもOK
4
STEP 4

想像して描く

  • 紙にプリントしてその紙の上か、スマートフォンなどのタブレット上で作業
  • 写真をくるくる回しながら、自然物と影の形から自由に想像したものを描く
  • 「正解」はありません。感じたままに表現しよう
  • 色をつけたり、言葉を添えたりしてもOK
  • 完成したら、タイトルをつけてみよう
5
STEP 5

分かち合う

  • 家族、友人、クラスメートと対面またはオンラインでつながる
  • ドロップレットを見せ合い、自由に話し合おう
  • なぜそう見えたのか、どんな気持ちになったのかなどを分かち合う
  • ドロップレットから思いつくタイトルを共有してから、作者のタイトルを伝えても面白い
  • 同じ写真でも多様な見え方があることに気づく
学びのポイント
  • 想像力の育成:自然物と影から新しい形を見立てる創造力
  • 多様性の受容:同じものでも人によって見え方が違うことの体験
  • 「みんなちがってみんないい」という感性:違いを楽しむ態度
  • 他者との分かち合い:作品を通じたコミュニケーション
  • 「影」を受容する態度:光と影、明と暗の両面を捉える感性
  • 自然とのつながり:身近な自然への観察を通した気づきと親しみ

これらの学びは、子どもたちが不確実な未来を生きていくための重要な力となります。

Part 3:実践する - すぐに使える授業プラン

明日からの授業に活かせる具体的な実践例を紹介します

幼児から大学生まで楽しめる CONNECTEDkind

私たちの研究活動では学校や大学での授業においてCONNECTEDkindの実践を重ねてきました。その大半は共通して次のような構成要素から成る授業です。

  1. 授業が始まる前にお題としてパーティクル(自然物と影の写真)を宿題として共有しておくか、ぶっつけ本番で授業の導入部分で共有する。紙と色鉛筆等の筆記用具や絵描きソフトの入ったタブレット等を用意する。
  2. 個々人の作業で写真を見て想像した(見立てた)ものを描く。描いた後は、対面授業のばあいはその場で隣同士かグループで見せ合って感想を伝え合う。Padletなどのプラットフォームを活用し、履修生だれもが鑑賞できるようにしておくこともできる。また教室での授業のばあい、事前に作成した作品(ドロップレット)をPadletにアップした上で、スクリーンに写して共有し、感想を伝え合うこともできる。
  3. クラスメートの作品(ドロップレット)を見ての感想をクラス全体で共有したり、タイトルの当て合いっこをしたり、他の作品に刺激を受けながら新たにドロップレットを描くことにチャレンジしたりもする。

Part4に示すエッセイには、幼児教育の教員養成課程の授業や小学生を対象にした公立学校での授業、そして大学での授業(毎回の授業の導入部分(授業の本題に入る前のウォームアップ)として実践された記録も含まれていますので、参考にしていただければと思います。

大学の場合は、1学期に14回ほど授業がありますので、1人で10作品(ドロップレット)をとります。そうした作業を毎週くり返すことで日常で想像力を駆使することにも慣れ、作品の質も徐々に高まることは珍しくありません。授業以外でも、拾ってきた葉っぱや枝などを題材に写真を撮り、家族や友人と自ら楽しんだ学生もいます。外出が自由にできないコロナ禍においては特に、自然や友人とのつながりの感覚を持てる貴重な体験だったと言えます。

大学でのPadletを用いた授業(この研究事業で試みた一例)

大学の教員養成課程でPadletを活用したオンライン・ハイブリッド型の実践例をご紹介します。

KPTの授業実践例をPadletを活用したKPTのテンプレート&約17分の授業プログラム(モデルレッスン)を紹介します。

授業の概要
  • 対象:大学生(学部の教員養成課程や大学院)5名〜70名
  • 形式:対面またはオンラインまたはハイブリッド
  • ツール:ホワイトボード(黒板)、スクリーン、プロジェクター、Padlet(オンライン掲示板)、Zoom等
Padletの活用方法

Padletは、オンライン上で作品を共有し、コメントし合えるツールです。以下のように活用しました。

  1. 自然物と影を写した1枚の写真を教員が選んで投稿。
  2. 学生たちは自由に想像しながらドロップレットを作成
  3. 完成した作品(ドロップレット)を上記1番のスレッドの下に投稿
  4. 他の学生の作品にコメントを付けたり、「いいね」をクリックしたりする
  5. 全員で自由に感想を述べ合い、オンライン・ギャラリーウォークを楽しむ
オンライン実践のメリット
  • 時間や場所に制約されず、各自のペースで取り組める
  • 全員の作品を一覧で見られ、多様な「想像力」(見立てる力)を鑑賞できる
  • 伝え合い、学び合うことにより、社会・情動的学習(SEL)の実践にもなる。
  • 記録が残り、後から振り返りやすい

Part 4:深める - 専門家による考察とヒント

理論と実践をつなぐ、さらなる学びのためのエッセイ集です

1

「CONNECTEDkind — あそびがひらく無意識への扉」

萱原 真希

私たちの多くは大人になるにつれ、絵を描くことを楽しまなくなったり、自由に想像しなくなったりします。そこで失われる遊びの余白とは何か。筆者自身の体験を踏まえてCONNECTEDkindの世界に私たちを導きます。

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2

「うごく影」
「CONNECTEDkindの学びの風景」です

神田 和可子

CONNECTEDkindは「評価では捉えきれない学びの動きであり、見えないはずのものに光を当てる想像の力」を私たちに授けてくれる内的プロセスであるとする著者。一人の教師とある絵本との出会いを切っ掛けに、真の学びの豊かさは何かを私たちに問いかけてきます。

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3

「保育とCONNECTEDkind」

木戸 啓絵

CONNECTEDkindは、大学の教員養成課程で学ぶ幼児教育や小学校教育の現場を目指す学生たちを対象にも行われてきました。保育者養成課程の学びが、CONNECTEDkindを通して実際に創られた大学生の作品と共に描かれています。

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4

「CONNECTEDkindの実践で大切にしたこと」

鈴木 陽子

日本を代表する美術教育の実践者であり、本科研費による研究の研究協力者である鈴木陽子先生は研究代表者及び分担者にも大きな影響をもたらすほどの優れた実践を展開して下さいました。優れた実践で大切にされたことはなんであったのでしょうか。子ども達の「雫(作品)」と共に描かれています。

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5

「コネクテッド・カインドで動いているのは何か? — 脳波スペクトルによる特徴」

野島 雅

CONNECTEDkindに取り組むとき、私たちの脳はどのように反応しているのでしょう。科研費による私たちの研究では脳波測定を通してこの〈学び=遊び〉の特徴を明らかにしました。美術科教育学会の『美術教育学』に掲載された論文をもとにコロナ禍で生まれた特徴ある遊び(学び)の真髄にアプローチします。

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6

日本文化における「見立て」

水島 尚喜

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7

「創造の源泉としての光と影―CONNECTEDkindが影を必要とする理由」

横田 和子

一般の創作活動と異なり、CONNECTEDkindの特徴は「影」も一緒に描くという「ルール」に見出せます。その意味は何なのか、心理学などの知見も援用しながら考察された論考は私たちを深い思索へと誘います。

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Part 5:広げる - 自由に使える素材集

授業をサポートする素材のライブラリです

これらの写真素材は、どなたでも授業やワークショップ等で自由にお使いいただけます。特に影の写らないような曇天や雨天の日、散歩に行けない日には、室内での活動として活用できます。

1
印刷して配布

写真をダウンロードして印刷し、生徒に配布します。紙に直接描き込むことができ、作品として保管できます。

2
プロジェクターで投影

クラス全体で鑑賞しながら、何に見立てられるかを話し合うことができます。ペアやグループでの活動にも最適です。

3
タブレットで描き込み

デジタルデバイスを活かして直接描き込むことができます。色付けや修正も簡単で、共有もスムーズです。

ポイント:写真から想像される絵(ドロップレット)を自由に描いてみましょう。正解はありません。一人ひとりの感性を大切にしてください。

ドロップレットの例

実際に写真から生まれたドロップレットの例を紹介します。主に大学生による作品です。1枚の写真から、学習者によって多様な作品が生まれることを確認できます。同じ写真を見ても、人によって全く違うものが見える ─ それが想像力の豊かさであり、多様性を受容する第一歩となります。

写真素材ギャラリー

授業で使える写真素材を一覧でご覧いただけます。気に入った写真をクリックして拡大表示できます。またダウンロードもできます。CONNECTEDkindの生みの親であるラウラ・ベレービチャさん、森の案内人であり写真家でもある小西貴士さん、本研究事業の代表である永田佳之さんが提供する、世界各地(日本、アメリカ、インドネシア、ポルトガル、スペイン)で撮影された自然と影の写真をご活用ください。

※本研究は、研究代表者:永田佳之「想像力を育む学習に関する学際的研究:CONNECTEDkindの効果測定を中心に」(2022~2025年度科学研究費補助金、基盤研究(C)、22K02556)の研究成果の一部である(代表 永田佳之)