科学研究費事業による成果

永田研究室では、科学研究費補助金をもとに自身や自国の教育を捉え直すことを目的に、教育分野の国際比較調査・研究を15年ほど続けてきました。ここでは、その成果物(報告書など)を紹介します。

2022 - 2025
年度

「想像力を育む学習に関する学際的研究:CONNECTEDkindの効果測定を中心に」(基盤研究C)
コロナ禍の現在、メディア学者のリチャード・グルーシンらが唱えるように、気候変動や感染症などの地球規模課題は私たちが〈人間ならざるもの(ノンヒューマンズ)〉といかなる関係性を再構築できるのかという根源的な問いを人類に突きつけている(R. Grusin (ed.) The Nonhuman Turn. 2015)。当然ながら、これは教育実践にも向けられた問いであるが、人間を中心軸にして発展してきた教育研究の喫緊の課題でもある。本研究では、CONNECTEDkind(コネクティッドカインド)というコロナ禍で誕生した学習手法から上記の課題に対する応答を試みる。日常で目にする自然物とその影から想像したものを描くという行為によってこのアプローチを経た学習者はなぜ元気になり、恢復するのかについて脳科学の知見を援用しつつ解明する。最終的には、ポスト・パンデミックの時代における学習を再構築するための実証的データ及び知見の提示と、〈人間ならざるもの〉と関係性の再構築に向けた想像力と創造性をはぐくむティーチャーズ・ガイドの作成を目指す。

2019 - 2021
年度

「地球規模課題に応答する学習に関する研究 -気候変動教育に焦点を当てて-」(基盤研究C)地球温暖化などの地球規模課題のデータを読み解き、果たして教育学は希望をもたらす学問たり得るかを問い直しています。 気候非常事態宣言を発した全国の自治体を対象にした質問紙調査や気候変動教育(Climate Change Education)に関する国内外の事例調査なども行なっています。詳細は「科研費ウェブサイト」 及び次のプラットフォームを参照して下さい。

2015 - 2017
年度

「気候変動と教育に関する学際的研究:適応と緩和のためのESD教材開発と教員研修」(挑戦的萌芽研究)ESDの具体的な領域として気候変動に関する教育を取り上げ、ビデオ(アニメーション)教材の開発を目指して、地球規模の問題に現場の先生とアーティストと研究者が協働で取り組みました。

2012 - 2015
年度

「アジア諸国における教育の持続可能性とレジリエンスに関する総合的研究」(基盤研究B) レジリエンス(しなやかな強さ)をキーワードに、アジア太平洋地域の5ヵ国(インドネシア・スリランカ・ニュージーランド・フィリピン・日本)の被災地でアンケート調査を実施し、学校のレジリエンスについて国際比較をしました。ESDという包括的な概念のもとに防災(Disaster Risk Reduction)は位置づけられており、本研究は持続可能な教育社会のあり方を明らかにすることを目的に実施されました。

2008 - 2011
年度

「東アジアにおける持続可能な開発のための教育の学校ネットワーク構築に向けた研究」(基盤研究B)

欧州のバルト海沿岸諸国が実施するバルト海プロジェクトという国境を越えた恊働学習プロジェクトに感化を受け、アジアにおける国境を越えた問題解決学習の可能性と課題を明らかにするために実施された研究調査です。期せずして最終年度に東日本大震災が起き、急きょ6ヵ国(ロシア・中国・モンゴル・韓国・台湾・日本)で若者主導の放射線測定プロジェクトも開始し、日・英語の報告書にまとめました。

関連記事(豪州の教育関連雑誌)

‘Youth-Led, Cross-Border Collaborative Radiation Measurement Project: Results and Issues’. (Co-author: Naoko Yoshida). The Journal of the Victorian Association for Environmental Education. Victoria Association for Environmental Education (VAEE). EINGANA. Vol. 36, No. 3. (ed. by I. Sutherland). December 2013. pp. 7-9.

2007年度

「アジア太平洋地域の持続可能な開発のための教育に関する国際研究集会に向けた企画調査」(基盤研究C) 「国連ESDの10年」のスタートに併せて開始されたESD関連の国際研究集会での情報共有を目指した企画調査です。電子版リーフレット及び調査報告等は下記のサイトからダウンロードできます。

2006 - 2008
年度

グローバリゼーションの時代における国際理解教育の実践基盤に関する学際的研究(萌芽研究)

An Interdisciplinary Study on the Foundation of EIU (Education for International Understanding) Practices in an Era of Globalization

特に2001年9月11日に起きた米国同時多発テロ事件以後、国際理解教育のあり方が根底から問われている。他者は理解可能とする従来の国際理解教育を捉え直し、理解を超えた他者との共存・共生のあり方は可能か、このアポリアに挑んだ調査研究。

報告書:刊行済み(電子版なし)

2003 - 2006
年度

「公設民営」型学校に関する国際比較研究:<公共性>の評価を中心に(基盤B海外学術調査)

近年、米国のチャータースクールなど、世界各地で新たな学校運営の「かたち」が出現した。設置主体は公的である一方で私的な運営主体の学校等、各国の現状と課題を国際比較を通して明らかにした。

報告書:刊行済み(電子版なし)

2000 - 2003
年度

オルタナティブな教育実践と行政の在り方に関する国際比較研究(基盤B海外学術調査)

フリースクールなどのオルタナティブな教育実践が各国で注目され、公教育に影響を与える事例も見られるようになった。その一方で、その経営は厳しく、中には偏見や差別と闘う実践主体も少なくない。こうした実態を現地調査を通して調べ、オルタナティブ教育と社会の関係性を国際比較によって類型化した。

中間報告書:刊行済み(電子版なし)
最終報告書:刊行済み(電子版なし)